大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和39年(オ)1374号 判決 1967年6月20日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人野口恵三の上告理由第一点について。

前審判決の証拠となつた書証が偽造であることを理由に再審を申し立てる当事者は、偽造者が有罪の判決をうけその判決が確定したことを証明するか、または有罪の確定判決をうる可能性があるのに、被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分をうけたりして有罪の確定判決をえられなかつたことを証明することを要するものというべきである。

本件において、原判決の確定したところによれば、上告人は、前審の控訴審において昭和三二年六月二四日付をもつて検察庁に対し佐藤登を甲五、六号証を偽造した犯人として告発したことを立証しながら、有罪の確定判決をえたことは立証しなかつたというのであり、また、上告人は、原審において、公訴権が時効消滅しなかつたならば有罪の判決をえたであろうと思わせるに足りる証拠があることを明らかにしているとは認められないから、原判決が、本件再審は民訴法四二〇条二項の要件を欠く不適法なものと判断したことは是認しえなくはない。論旨は、原判決を正解しないものであつて、採用することができない。

同第二点について。

原判決は、上告人の本件再審は、ひつきよう、民訴法四二〇条二項の要件を具備していないと判断しているものであるから、公訴時効完成前に上告人が偽造の事実を知つていたかどうかは原判決の結論に影響のないことであり、違憲の主張も、原判決が同条項の解釈を誤つたことを前提とするものであるから、論旨はいずれも採用するに値しない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例